第七章

この「振り返る」をまとめてみていかに多くの人の助けがあったのかをあらためて良く知り感謝の気持ちで一杯である。
イラストレーターとして最初の出会いであるマッキャン・エリクソンの三菱自動車、エッソガソリン、コカ・コーラ担当のデザイナーやいすず自動車担当のデザイナーにはイラストレーションの本物を教わったような気がする。

私がイラストレーターとして永年続けられた原点は高校時代にあったように思われる。
それは親友、中沢金四郎である。彼は私より一年先輩であるが絵を通しての友であり、好敵手で切磋琢磨する相手であった。
彼は、インダーストリアルデザイナーとして数々の権威ある賞を受賞し(株)ビクターのデザイン室に勤務。定年迄過ごした。

イラストレーターは自由業であるために自分の制作した作品には絶対の責任がともなってくる。確かに芸術家気取りでも構わないのかも知れない。しかし、作品は一人で制作するのだが目的は一冊の雑誌だったり書籍であったりポスターであったりカタログに使われる一つの目的のある作品なのである。それは何を意味するかは、たった一人の作業ではなくチームワークなのである。一冊のまたは一枚の本及び広告はある目的を持っているため、その目的に沿う作品でなければならないのである。
そのためには、感謝の気持ちと相手の立場を理解する努力から素晴らしい作品が生まれてくるのではないかと、この「振り返る」を綴ることによって、私にかかわりを持って頂いた方達の思い出が走馬灯のように駆け巡ってきた。
この思いは、作品制作の技術表現より人間関係の素晴らしさを知り、素直な気持ちの発露が良い結果に結びつくような気がする。
これからも出合いを大切に生きて行こうと思っている。

第八章へ