第八章

想い出のイラストレーション

学習研究社(学研)○○年科学の雑誌編集部からリニアモーターカーのイラストレーションの依頼で取材に行った。
私の記憶では、リニアモーターカーの実験に成功したのは旧国鉄、現在のJRが日本で一番早かったと思う。
実験に成功してすぐ、学研からの依頼で小金井にある国鉄技術研究所に出向いたのだが残念な事に、もうすでに実験に使われたリニアモーターカーは分解されていた。私より担当者の方が申し訳無さそうに応対してくれた上、別棟にある建物へ案内してくれた。細かく分解されたリニアモーターカーの数多くの部品は床に並べられていた。その部品の一つ一つを丁寧に説明してくれた。
私は恐縮しながらも、実験の様子の写真と図面を借りてスケッチしながら確認をして頂き仕事を進めた。
取材は一般の人が立ち入る事のできない領域での仕事だけに、正しい情報を伝えるために簡潔で分かりやすい作品制作に責任が生じてくる。

この作品は科学雑誌「子供の科学」編集部から依頼のあった作品。この作品は、警視庁へ取材に行って制作した作品で担当の警察官がサービスにも白バイにまたがりモデルを勤めてくれたのである。
この取材は、堅苦しい取材と覚悟していったのだがそれとは逆にとても親切に説明をされ楽しく取材した事を記憶している。
スケッチの終わったところで確認をしてもらったら、眉を曇らせ「本物そっくりに描かないで下さい」「何しろ、模倣して犯罪を生むきっかけを与えてしまいますから」
たしかに権力のある仕事だけに細部に気を使わなければならない仕事から一つ一つ犯罪を生むきっかけを少なくしようとの気持ちが伝わってきた。
イラストレーターという仕事は情報を正しく伝える事が大切なのだが今回のように社会への配慮も大切な取材なのかも知れない。