第五章

「子供のための絵画教室」

付き合いのあった画材屋さんから子供に絵を教えて欲しいと数年前から頼まれていたが、なかなか時間がとれず断り続けていた。しかし再三に渡っての要請から引き受ける事になった。実際、子供達に絵を教えてみると子供達から教わる事の方が多かったような気がする。

子供達の絵画教室では絵本のダミーが出来上がると、いつも子供達が待ってましたとばかりにダミー本を取り上げて、机の下や部屋の隅っこで絵の勉強そっちのけで絵本を熱心に読みふけっている。
父兄の方々には申し訳ないが、こんな時が自分自身絵本を描いていて本当に良かったなーと幸せに感じるひとときだった。

この頃、マッキャン・エリクソンから電話があり、コカ・コーラの仕事を頼まれた。
丁度、スーパーカーブームの時でコカ・コーラの瓶の蓋のコルクにスーパーカーのイラストレーションを使うので描いて欲しいとのことであった。
かなりの数のイラストレーションを描いた。この仕事は大ヒットになり子供達の間でコーラーを飲むために買うのではなく、王冠が欲しいために買い、瓶の中のコーラーを粗末にするため父兄の間から非難の声が上がりだした頃、各地で胸に付けた王冠で怪我をする子供達が続出するに及んで廃止する事になった。
私にもそれに関わっていた一人として胸を痛めていた。相変わらず、子供の絵画教室は順調に推移していた。私も結構忙しく子供の絵画教室を始める数年前から、お茶の水にあるデザイン専門学校の講師を引き受けていたが、私の環境もすっかり変わっていた。

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