第三章

「すずき出版編集長 安井 淡さんとの出会い」

丁度、そんな時代(記憶ではもう少し早い時期のような気がする)安井淡さん(故人・すずき出版 編集長)との出会いがあった。
絵本の事を何一つ知らない私に絵本の制作をすすめるのだから「びっくり」というより不安が先にたってしまった。なにしろ私は子供が余り好きではない。(自分の子供は別だった)しかし、安井淡さんの決めセリフで参った。「これからの新しい絵本を描いてくれる人だから。」上手に乗せられカルーイ私だった。
頼まれた仕事は、月刊誌「しぜんのくに」に扱うふうせんりょこうだった。(今、見たら赤面ものどころか「はずかしい」)安井さんは心にもないお世辞を云って「なかなか良い出来であったよ。今迄にない新しい絵本が出来た!」なんて云ってくれたが心は平静ではなかった。
1册目の絵本を描き終えて、まもなく安井淡さんから月刊誌「こどものくに」に『みんなにはなわ』の絵本をお願いしますと連絡があった。

今度の絵本は予算があまりないので4色・2色でお願いしますとのことであった。
4色・2色の見開きページでは絵が分割されて見にくくなるのを嫌った私は、4色・2色を感じさせない一つの方法から見開きのページで見開きに接する部分をグラデーション化させながら一枚の絵として十分見ごたえがあって自然に見える絵を完成させた。「やっぱり、さすがだね」安井淡さんは、文を書いた方も皆喜んでくれたので少しは絵本に対して自信を持てるようになった。
その間、広告の仕事や出版社の図鑑の絵を描きながら絵本の仕事をこなすうち、フレーベル館やチャイルド社などから絵本を頼まれるようになった。この頃は学研の図鑑の仕事取材して描く事も多かった。

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